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炎桜/えんおう

脳性麻痺のボッボぼくのタッタ体験的小説ブログです。
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1.ボクの障害
 ボッボボクは人に真似され、自分は人と違うことに気付いた---。
−−−−−−−<障害>−−−−−−−−
   <1カマキリ人間>
自分の意思とは無関係にカマキリのように曲がりくねってしまう腕、
酔っぱらいの千鳥足のような歩き方、人と喋ると言語障害のために吃(ども)る。
二歳の頃の小児麻痺のせいでそんな体になっていた彼は、
ただ、それだけの理由で周りの人間から馬鹿にされ、いじめられていた。

 幼稚園の頃までは別にそのようなことはなかった。
何故なら、幼稚園児というのは無邪気で、障害者だろうが健常者だろうが、
関係なく付き合うからだ。

だが、小学校に入学してからは彼は自分が初めて障害のせいで馬鹿にされ、
いじめられるようになったことに気付いた。
 小学校に入学して間もない頃、二年上の上級生が彼の教室にやって来て、彼の目の前で
彼の真似をした。彼がいつもしてるように、カマキリのように右腕を曲げ、酔っぱらいのような歩き方で歩いた。
それは全く、酷い真似だった。
 
 彼は初め、自分の真似をしたとは思わずに、その上級生を笑った。すると
何ということだろう、今度はそいつも一緒になって笑ってるではないか。
彼は奇妙に思い、笑いを止めると、そいつもピタリと笑いを止めた。
ここでようやく彼は気づいた。その上級生が今まで自分の真似を真似をしていたことを、自分はどのように人に見られていたかも。
  そして自分の背負うべき運命を---。

<2耳>
彼は耳も遠かった。
しかし、補聴器は付けなかった。何故かといえば長時間、
補聴器を付けていると、むず痒(かゆ)くなってしまうからだ。
 小学三年の時に一時期付けていたことがあったが、痒くて、痒くて、気になって仕方がない。これでは耳が聞こえるどころではない。気になってしょうがないので
やがて、彼は補聴器を外すことにした。
完全に聞こえないというほどではない(もっとも左の耳は全く聞こえないが)。
彼は耳が遠いせいで苦労したことは就職するまでは一度もなかった。

障害者であるから周りも気を使ってくれたせいもあるが、それ以前に彼の耳に大事な用件を周りが吹き込まなかったからだ。
 それに彼の周りにとってみれば、いてもいなくても、誰も喜びもしなければ、
悲しみもしない存在だったからだ。

彼が十八の時、こんにゃくやところてんを製造する会社に就職した。職種は事務だった。上司は彼が耳が遠いのはわかってるはずなのに、早口で命令する。
それを彼は半分理解しても、全部は理解できない。それで上司に怒られてばかりだった。
例えば上司が彼に、
「この文書何々スパーにファクスで送って!」
と早口で言ったとする。だが、彼にはそのスパーの名前が上司の早口と彼の難聴で聞こえないものだから、上司に一々、確認しなければならない。
そんな彼に上司はイライラしていた。彼もそんな自分にイライラしていた。
それで彼は自分の難聴と生まれ持った障害のせいで事務の仕事は満足にできなかった。

彼が出来るのはパソコンを使った伝票入力や文書作成しかなかった。
しかも、ミスが多少あって一日に三回は上司に怒られていた。
そのような理由で、彼は事務に就いてから二年後、
製造に配置換えをさせられることとなった。
彼は密かにホッとした。その頃になると事務はウンザリだったからだ。
だが、製造の仕事も事務とは違った意味でウンザリさせられるとは
全く思いもしなかった。
 
<3手の震え>
彼は味噌汁やコーヒー等が苦手だった。
別に味噌汁やコーヒーの味が苦手だというわけではない。苦手だというのは器だった。
味噌汁が入っているお椀、コーヒーが入っているカップ。
何故、それらが苦手かというと彼がそれを飲む前に全てこぼしてしまう
恐れがあるからだ、手の震えによって。
ならば、その瞬間だけ手の震えを抑えると、どうなるのか? 披も何回かそれを試みた。

しかし結果は無惨だった。あまりの緊張により震えが止まらなくなってしまう。
否、それは益々、激しくなって、なおさら味噌汁やコーヒーをこぼしそうになる。

それで彼はお椀やカップに入っている味噌汁やコーヒーが好きではなかった。
しかし、缶やペットボトルに入っているジュース、コーヒー、お茶等は手の震えに関係なく飲めた。缶やペットボトルは多少、手が震えても飲み口の面積が少ないために、
こぼさなかったからだ。

  <4千鳥足>
彼の歩き方は脳性麻疹の障害のために健常者のようにまっすぐに歩けなかった
ので、酔っ払いの千鳥足のようなフラフラとした歩き方をしていた。
そのために小学生の頃の渾名の一つは酔っ払いであった。
以来、それがトラウマとなり、彼は人が酔っ払ってるのを見ると殴りつけたく
なるような衝動に駆られた。

それが実の親でもだ! 
 否、実の親だからこそ、殴りたくなる衝動に駆られた。
しかし、彼は我慢をした。本当は自分の身体をこんな風にした
張本人だからこぞ殴りたいのに殴らなかった。否、殴れなかった! 
それを行なうには彼は気が弱かった。

その気の弱さが何に起因しているかといえば、全ては自分が生まれ持った障害の  
せいだと彼は思っていた。
 
<5吃音症>
    彼は言語障害もあった。そのせいで、よく吃った。
独り言は別に吃りもしないが、いきなり話しかけられたり、
少しでも緊張をすると吃った。それで彼は必要最低限の会話しかしなかった。
本当は誰とでも喋りたいのに……。
 
それで彼はそんな自分の吃りを克服するために様々な努力をした。
レコード店ではそれほど欲しくないCDの在庫を店員に訊いてみたり、駅前で道が分からない振りをして人に道を尋ねてみたり、

本屋で本を注文したり、レンタルショップでトイレに入っていいか訊いたりもした。
しかし、彼は自分か努力をすればするほど、
努力をしている自分を嘲笑うかのような視線に耐え切れなくなってしまった。
それにいくら努力をしても吃りは少しも良くはならなかった。
やがて彼はいつからか、吃りを克服する努力を止めてしまった。

本当は喋りたい。しかし、自分なりに一生懸命、努力をしても一向に吃りは直らない。
悲しかった。
否、それを通り越して虚しかった。
吃りがなければ会社の電話にも応対出来たのに、
吃りがなければ自分を馬鹿にした奴等に罵声を浴びせられるのに、
吃りがなければ自分が気になっている女性とも上手に喋れるはずであったのに……。
 
彼は虚しかった、本当に虚しかった。無理して喋ろうとすると吃る。落ち着い
て喋ろうすると、今度は余計に緊張して吃る。
人の視線を感じると吃る。吃れば
今度は周りの人が笑っているように感じる。
いくら努力をしても彼は吃り、吃る度に周囲の軽蔑や嘲笑を感じていた。
  <6嘲笑い>
彼はそれらの障害のせいで心ない人達に馬鹿にされ、いじめられていた。
彼が吃れば人は彼の真似をして吃り、
彼が歩けば人は酔っ払いのように歩き、学生の
時は殴られ、蹴られ、コンビニで買物をすれば手の震えによりお釣りを落としそ
うになる彼の姿を店員が嘲笑う。
彼がジロリと相手を睨むと店員も睨み返す。
やがて彼は自分の気の弱さのせいから自分を嘲笑った店員から視線を逸らし、
逃げるようにコンビニからコソコソと立ち去る。

要するに彼は彼なりに一生懸命に頑張って何かをしても、結局は自分の障害のせいで無惨な結果に終わってしまうのだ。
 
<7神>
そのような理由で彼は自分を取り巻く全てのものを憎んでいた。自分を馬鹿に
する人を、自分をいじめる人を、
自分を扱き使う職場を、自分を生んだ親さえも。
そして、こんな身体にした神も。否、彼は神の存在を信じていなかった!
 もし、神がいるなら、神が全ての人類に平等なら、自分がこんな身体にならなくって済
んだはずであると彼は信じていた。
 


     <8勧誘1>
高校二年の時の夏休みのことである。夏休みの宿題を図書館で済まし、帰ろう
として席を立つと、すぐに隣に座っていた三十前後くらいの女性もそれを追いか
けるように席を立ち、
 「あのお」
 その女性は猫が人間にじゃれつく時に出すような声で披に話しかけてきた。彼
はその女性の顔を冴しげに見た。
 「今、お時間いいですか?」
 彼は別に用はないが黙って首を横に振り、その場から逃げるように立ち去った。が、
その女性は追いかけてきた! 彼女は追いかけながら叫ぶ。
 「待ってくださあい、待ってくださあい!」
 奇妙な光景だった。千鳥足のような歩き方で階段の手摺を使って逃げ出す障害
者、それを追いかけるのは
「待ってくださあい、待ってくださあい」とそれしか
言葉を知らないかのような三十前後の女性。やがて、図書館の玄関で彼女は彼の
肩を捕まえた。
 「何で、逃げるんですか?」
 「ジッジッジッ時間がないから」
 「時間はとらせません。ユバリ様の教えをあなたに授けるだけですから」
 「ユバリ様の教え?」
「はい、ユバリ様の教えです」
 ここで彼は改めてその女性の顔を見た。歳は三十前後だとは思うが、その瞳は
まるで三歳児のように何も知らないかのような瞳であった。
なおかつ、その瞳は阿呆のようでもあった。

     <8勧誘2>
  彼がジッと自分の顔を見ているので彼女は不審気に、
 「私の顔に何か?」
 「いえ、それで何です。その、ユッユッユッユバリ様の教えって奴は」
 「はい、これを見て頂ければ分かると思います」
 彼女はカバンから表紙には髭がモジャモジャと気持が悪いほどに生えている
  五十代半ばくらいの卑しい目付きをした男の写真がプリントされてあるパンフレッ
トを出し、彼に渡した。 

 そこには大体、このようなことが書かれてあった。
 『破滅の時はもうすぐやってくる! それから逃れるにはキリストの生まれ変わ
りである、我がユバリ教の教祖、ユバリ様を拝みなさい』
 
   また、こんなことも書かれてあった。
 「金を憎みなさい。金は全てにおける敵です。金をキリストの生まれ変わりであ
るユバリ様に捧げ、その汚れた体を浄めなさい』
 
<8勧誘3> 

彼はそれらを見て思わず吹き出してしまった。それを見た彼女は少し怒ったよ
うな声で問い質した。
 「何かおかしいんです?」
 「いや、何でもないです、ただ」
 「ただ? 何です、何かおかしいんです?」
 「この、何? ユバリという人はキリストのウッウッウッ生まれ変わりなの?」
 「はい、キリストの生まれ変わりです」
 「その根拠は?」
 「ユバリ様がそうおっしゃっているからです」
 「それで、あなたはそれを信じているんだ?」
 「はい!」
「それで、あなたは僕をカッカッカッ勧誘してるんだ?」
 「はっはい、是非、入会してください!・」
 彼は段々と腹が立って来た。この世に存在しない神を信じ、
それを信仰する宗教に自分を勧誘しようとするその女性を。

      <8勧誘4> 
彼はこういう人間は無視すればいいということは分かっていた。が、
彼は彼女が信仰する神という存在を、自分を助け
てくれない神という存在を、根本から壊してやりたくなった。
 「それで、ニュッニュッニュッ入会すれば、キリストの生まれ変わりのユバリ様
は僕に何をしてくれるのかな?」
 「あなたの苦しみを取り除いてくれますに
 「じゃあ、ニュッニュッニュッ入会しよう。でも、その前に」
 「その前に?」
 「ボッボッボッ僕の体を今すぐに健常者にしてくれるかな?」
 「え?」
「〜え、じゃなくてさ、僕をケッケッ健常者にしてくれよ。今すぐに」
「そういうことは入会してからユバリ様御本人におっしゃってください。入会金
はですね」
 「お金を払わないと健常者にしてくれないんだ?」
 「それはもちろんです。まず、金をユバリ様に捧げ、身を浄めないといけません」
 「それは変だね。キリストのウッウッウッ生まれ変わりなんだから、そんなこと
しなくても僕を健常者に出来るはずなんだけどなあ……」
 この彼の言葉で彼女は黙ってしまった。それで彼は調子に乗って続けた。
 「まあ、デッデッデッ出来るわけないですよね、ユバリ様は元々、キリストの生
まれ変わりじゃないですし、それに」
 ここで彼は彼女の顔をチラリと盗み見た。その顔には絶望の二文字が書かれて
あったように見えた。

彼は貰ったパンフレットを彼女の目の前で満足気に被りながら告げた。
「カッカッカッ神なんて元々、イッイッいないんですから」
 それでその女性はその後、一言も発することなく逃げるように
彼から立ち去った。
 
  <9公平>
彼が中学二年の時、父親が競馬で万馬券を珍しく当て、8ミリビデオカメラを
買って来た。彼の父は試しに彼を撮った。
彼も喜んで撮られた。普通に歩いた、
普通に喋った、普通にはしやいだ。普段通りの自分を撮ってもらった。
つもりだった。が、
 
 そこに映っていたのは、これが家族や自分をいじめる人達と同じ人間
かと目を疑いたくなる自分だった。
彼は今まで人に馬鹿にされ、いじめられてきた。
しかし何故に自分がここまで馬鹿にされ、いじめられるのか理解が出来なか
った。が、ビデオに映っている自分の姿を見て、ようやく理解した。
彼が何故馬鹿にされ、いじめられるのかを。
鏡でさえ映さない本当の自分の姿を目の当りにして------。
 そんな彼の名前は中野公平といった。何という皮肉!
 自分は人と違っているのに、人に馬鹿にされているのに、人にいじめれているのに、人に差別されているのに、
人に軽蔑の視線で見られているのに、全然「公平」ではないのに、
そんな名前を付けられるとは。彼は全く、不公平そのものであった。
 それらの理由で公平は自分が障害者であることを憎んでいた。出来るなら自ら
の障害だけを燃やして、健常者になりたかった。
何の気兼ねもしないで普通の生活が出来る健常者に!

  一、障害(完)

●今まで、Upした分は立ち読みトップへ
鈴木豪 | ノベル | comments(0) | -
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