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炎桜/えんおう

脳性麻痺のボッボぼくのタッタ体験的小説ブログです。
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5.吃音症(きつおんしょう)
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<5吃音症>
    
   彼は言語障害もあった。そのせいで、よく吃った。
独り言は別に吃りもしないが、いきなり話しかけられたり、
少しでも緊張をすると吃った。それで彼は必要最低限の会話しかしなかった。
本当は誰とでも喋りたいのに……。
 
それで彼はそんな自分の吃りを克服するために様々な努力をした。
レコード店ではそれほど欲しくないCDの在庫を店員に訊(き)いてみたり、駅前で道が分からない振りをして人に道を尋ねてみたり、

本屋で本を注文したり、レンタルショップでトイレに入っていいか訊いたりもした。
しかし、彼は自分か努力をすればするほど、
努力をしている自分を嘲笑うかのような視線に耐え切れなくなってしまった。
それにいくら努力をしても吃りは少しも良くはならなかった。
やがて彼はいつからか、吃りを克服する努力を止めてしまった。

本当は喋りたい。しかし、自分なりに一生懸命、努力をしても一向に吃りは直らない。
悲しかった。
否、それを通り越して虚しかった。
吃りがなければ会社の電話にも応対出来たのに、
吃りがなければ自分を馬鹿にした奴等に罵声を浴びせられるのに、
吃りがなければ自分が気になっている女性とも上手に喋れるはずであったのに……。
 
彼は虚しかった、本当に虚しかった。無理して喋ろうとすると吃る。落ち着い
て喋ろうすると、今度は余計に緊張して吃る。
人の視線を感じると吃る。吃れば
今度は周りの人が笑っているように感じる。
いくら努力をしても彼は吃り、吃る度に周囲の軽蔑や嘲笑を感じていた。
次にに続く

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神よ!我を!
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<7神>


そのような理由で彼は自分を取り巻く全てのものを憎んでいた。自分を馬鹿にする人を、自分をいじめる人を、

自分を扱き使う職場を、自分を生んだ親さえも。
そして、こんな身体にした神も。否、彼は神の存在を信じていなかった!

 もし、神がいるなら、神が全ての人類に平等なら、自分がこんな身体にならなくって
済んだはずであると彼は信じていた。


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宗教勧誘1
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 <8勧誘1>

高校二年の時の夏休みのことである。夏休みの宿題を図書館で済まし、帰ろう
として席を立つと、すぐに隣に座っていた三十前後くらいの女性もそれを追いか
けるように席を立ち、
 「あのお」
 その女性は猫が人間にじゃれつく時に出すような声で彼に話しかけてきた。彼
はその女性の顔を冴しげに見た。
 「今、お時間いいですか?」
 彼は別に用はないが黙って首を横に振り、その場から逃げるように立ち去った。が、
その女性は追いかけてきた! 彼女は追いかけながら叫ぶ。
 「待ってくださあい、待ってくださあい!」
 奇妙な光景だった。千鳥足のような歩き方で階段の手摺を使って逃げ出す障害
者、それを追いかけるのは
「待ってくださあい、待ってくださあい」とそれしか
言葉を知らないかのような三十前後の女性。やがて、図書館の玄関で彼女は彼の
肩を捕まえた。
 「何で、逃げるんですか?」
 「ジッジッジッ時間がないから」
 「時間はとらせません。ユバリ様の教えをあなたに授けるだけですから」
 「ユバリ様の教え?」
「はい、ユバリ様の教えです」
 ここで彼は改めてその女性の顔を見た。歳は三十前後だとは思うが、その瞳は
まるで三歳児のように何も知らないかのような瞳であった。
なおかつ、その瞳は阿呆のようでもあった。

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汚れた体を浄めなさい
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<8勧誘2>

  彼がジッと自分の顔を見ているので彼女は不審気に、
 「私の顔に何か?」
 「いえ、それで何です。その、ユッユッユッユバリ様の教えって奴は」
 「はい、これを見て頂ければ分かると思います」
 彼女はカバンから表紙には髭がモジャモジャと気持が悪いほどに生えている
  五十代半ばくらいの卑しい目付きをした男の写真がプリントされてあるパンフレッ
トを出し、彼に渡した。 

 そこには大体、このようなことが書かれてあった。
 『破滅の時はもうすぐやってくる! それから逃れるにはキリストの生まれ変わ
りである、我がユバリ教の教祖、ユバリ様を拝みなさい』
 
   また、こんなことも書かれてあった。
  『金を憎みなさい。金は全てにおける敵です。金をキリストの生まれ変わりであ
るユバリ様に捧げ、その汚れた体を浄めなさい』


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キリストの生まれ変わり
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<8勧誘3> 

彼はそれらを見て思わず吹き出してしまった。それを見た彼女は少し怒ったよ
うな声で問い質した。
 「何かおかしいんです?」
 「いや、何でもないです、ただ」
 「ただ? 何です、何かおかしいんです?」
 「この、何? ユバリという人はキリストのウッウッウッ生まれ変わりなの?」
 「はい、キリストの生まれ変わりです」
 「その根拠は?」
 「ユバリ様がそうおっしゃっているからです」
 「それで、あなたはそれを信じているんだ?」
 「はい!」
「それで、あなたは僕をカッカッカッ勧誘してるんだ?」
 「はっはい、是非、入会してください!・」
 
彼は段々と腹が立って来た。この世に存在しない神を信じ、
それを信仰する宗教に自分を勧誘しようとするその女性を。


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健常者にして
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<8勧誘4> 
彼はこういう人間は無視すればいいということは分かっていた。が、
彼は彼女が信仰する神という存在を、自分を助け
てくれない神という存在を、根本から壊してやりたくなった。
 「それで、ニュッニュッニュッ入会すれば、キリストの生まれ変わりのユバリ様
は僕に何をしてくれるのかな?」
 「あなたの苦しみを取り除いてくれますに
 「じゃあ、ニュッニュッニュッ入会しよう。でも、その前に」
 「その前に?」
 「ボッボッボッ僕の体を今すぐに健常者にしてくれるかな?」
 「え?」
「〜え、じゃなくてさ、僕をケッケッ健常者にしてくれよ。今すぐに」
「そういうことは入会してからユバリ様御本人におっしゃってください。入会金
はですね」
 「お金を払わないと健常者にしてくれないんだ?」
 「それはもちろんです。まず、金をユバリ様に捧げ、身を浄めないといけません」
 「それは変だね。キリストのウッウッウッ生まれ変わりなんだから、そんなこと
しなくても僕を健常者に出来るはずなんだけどなあ……」
 この彼の言葉で彼女は黙ってしまった。それで彼は調子に乗って続けた。
 「まあ、デッデッデッ出来るわけないですよね、ユバリ様は元々、キリストの生
まれ変わりじゃないですし、それに」
 ここで彼は彼女の顔をチラリと盗み見た。その顔には絶望の二文字が書かれて
あったように見えた。

彼は貰ったパンフレットを彼女の目の前で満足気に破りながら告げた。
「カッカッカッ神なんて元々、イッイッいないんですから」
 それでその女性はその後、一言も発することなく逃げるように
彼から立ち去った。

障害編<完>
明日は家族編です


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ああ、恋がしたい。
今、猛烈に恋がしたい。
別に片思いでもいいのだ。
ただ、恋がしたいのだ。
何でかというと、恋は全てにおける原動力であると
僕は思っているからだ。
仕事においても、勉学においても、創作においても?
全て何ごとにおいても恋は大事である。
そんなわけで、恋がしてえ!!
でも、そんな簡単に恋の相手が見つからない.........
ああ........恋がしたいなあ。ラブ


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鈴木豪 | 徒然 | comments(0) | -
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家族?
家族を公平は憎んでいた。何故かといえば、自分のような障害を持った
人間が、一人もいないからだ。

−−−−−−−−−−−−−<家族>−−−−−−−−−−−−−−−−−−

<家族1>

中野公平の家族は父、母、姉が二人、そして、彼の五人家族であった。
彼は末っ子であることに加え、障害者であるために、親達に過保護に育てられていた。
しかし、それは彼自身には迷惑であった。
何故かというと、姉達がそれを妬んで彼を無視するからだ。
それに男と女とでは何となく話が合わなかった。
いや、もしかすると健常者と障害者であるから話が合わなかったのかも知れない。
その代り、親子関係は上手くいっていた。
いや、姉弟関係、家族関係、全てが上手くいっていた。表面上は……。


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エゴイストの父
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<家族2>

公平の父は一種のエゴイストであった。公平が高校受験の時だった、
彼は本当は別な高校を受けたかったのだが、
公平の父は自分の母校が一番だと信じ込んでいた。
その高校に入れば息子、いや、自分が世間に認められるという、
そのエゴイスト的な思い込みにより息子を無理矢理に受験させた。
その高校に合格するには彼の学力では到底、無理であった。
彼は猛然と反対した。
自分の学力では無理であるし、それに自分には他に行きたい高校があることを
吃りながら説明した。

しかし、彼の父は無理矢理、自分の母校を彼に受験をさせた。
彼の父は自分の息子だから合格出来ると信じて疑わなかった。が、不合格だった。
それも当然だった。彼自身、その高校に入学したくはなかったし、その高校に合格するほどの学力もなかった。第一、父親に強制されて受験した高校。
不合格になっても何とも思わなかった。
むしろ彼自身、それを望んでいた。
結局、彼は二次募集で自分
が初めから希望した高校を受験し、合格した。


次に続く

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罵る(ののしる)父
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<家族3>

公平の父は競馬が好きであった。
競馬がある日はコンビニからスポーツ新聞を買って、
研究し、一日一万円くらいだが、女に貢ぐように自分が信じる馬に貢いだ。
ほぼ毎回、当たりもしない癖に。だが、そのせいで家計が
切迫するようなことはなかった。
彼の父は競馬を好きであったが、狂ってはいなかった。
それはせいぜい、趣味の範囲であった。
 
 公平の父は酒が弱い癖に毎晩、ウィスキーを飲んだ。しかも、
酒癖が非常に悪かった。
その酒癖の悪いせいで、家族をよく罵った。
彼も例外なく罵られた。
「この障害者!」とか「お前なんか生まれなくてもよかったんだ!」とか、
そういう類の罵声を酔っ払うと、公平の耳にナイフを投げ付けるように浴びせた。

しかし、彼は自分の父親の言葉が理解出来なかった。
彼の耳が悪いせいもあるが、彼の父親自身酔っ払っていて、
言葉が支離滅裂でよく聞こえないからだ。
しかし、それでも障害という言葉だけは、
彼の耳にも非常によく響いた。
それで彼は自分の父が自分を罵っていることだけは分かっていた。
 
そんな言葉を吐く父親を公平は嫌いだった、いや、憎んでいた。
いかに酔っ払っていても、それだけは許せなかった。
しかし、表面上の父は彼に優しかった。
それで彼も表面上は優しい父を持つ幸福な障害者を演じていた。

  次に続く


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